王家の谷へ





あなたの胸に背をあずけると、決まって抱きしめてくれる

後ろから腕を広げてすっぽりと


あなたの左腕は簡単に片手で私を包み込んでしまう

あまった右腕が、身動きできないほど絡みこんで・・

そんな時、自分の小ささをすごく感じるのよ

そして、あなたの大きさも・・・・


ほら、今も

ちょっと甘えたくなって そっと・・もたれてみたの

ざらり・・と聞こえる衣擦れの音

マントで全てを包みこむようにゆっくりとわたしの体にまわりこむ



しってる?気づいてる?

いつも同じなのよ。

あなたの腕の回し方・・・。

必ず左腕からなのよ。

当然・・・といえば当然かもしれないけれど・・・



あなたは剣を握る人だから・・・



無意識の内にどこかで柄を探している

幼い頃からその手にいつも与えられた物

そしてそれはあなたの手の中で煌めき

なんどもわたしを守ってくれた



だけど・・・わかっていても・・・・・・それでも・・・辛い

胸が痛い・・・・

わたしのみえないところで あなたは柄をにぎり続ける

国をまもるため・・・ そして私をまもるために






「・・・・・そなた・・それはなにか意味でもあるのか?」

「え?」

「いつも・・・こうしてだきしめると・・必ずわたしの右手に口づけている・・・」




・・・・・・・・・・
わたしの指はあなたの手をにぎりしめていた



いとしくてせつない・・・無意識の行為






王家の谷へ

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