王家の谷へ  Back

背 中 U
By 王様ばーじょん



まるで猫のようだと思った。

最初は確か・・・・・木陰でふらりと肩に寄りかかってきた時か・・

好きなときにふらりとやって来て、居心地がよければそのまま寝入ってしまう。
かと思えば、探しても探してもどこか気に入りの遊び場に出てしまって帰ってこない。
首根っこを捕まえて、無理やり側まで引き戻したりしたことなど数限りない。
どちらかというと、行方不明になる方が多いと思うぞ。

自分だけに懐いているはずなのに、どうしてか一つ所に居つかない。
気分次第で自由気まま・・・
このごろようやく言わずともちゃんと目の届く範囲について来るようになったが・・・
見回すと、少し離れたところで上機嫌にこちらを見ている
名を呼ぶとやって来るが・・犬のように嬉々としてとびついてくることはない。

周囲への警戒心が強くて・・他の者共の目がある場ではわたしに甘え来ることを決してよしとしないのだ。

・・・・・・・

そっと後ろからそなたが近寄ってくる気配がする。
どうやらわたしの側にいたいらしい。

この愛しい猫が逃げないように
驚かさないようにしてやらなければな。
その為に・・大概ここでは人払いをさせているのだか。


そうしてやると、本当にゴロゴロと、普段からは想像できないほど甘えて擦り寄ってくるのだ。
何故だか背中にぴったりと体をくっつけてくる。
背をくすぐるそなたの肌の感触で分かる・・
口で言えぬ代わりにそうやって好きだ好きだと申しておるのだろう。


まったく・・・手間のかかる奴め


背中に取り付いている温かい体をくるりと持ち上げ膝の上に乗せてやると、それこそ猫のように、柔らかな肢体を器用に丸めて甘い声を出す。

金色の猫のような・・愛しいわたしの妃・・・・






Fin.


王家の谷へ  Back

© PLEIADES PALACE