王家の谷へ

メディタレィニアン
〜 地中海での休暇 〜





「うわぁ・・・っ 気持ちいい」

潮風になぶられ、大きく息を吸い込む。
果てしない天空
どこまでも青い海
紺碧にひろがる地中海
180度見渡せる透き通った水平線

バルコニーからの見事な眺めにキャロルは瞳を輝かせて小躍りした。

「素敵だわ♪ すぐ前が砂浜だなんて・・。ちょっと見に行ってきていい?」

そういいながら、もう部屋を出ようとしている。
後手に手首をつかまえられキャロルはその場でたたらを踏んだ。

「きゃっ!!」
「慌てるな。そのまま行く気か?着いたばかりなのだぞ。砂浜は逃げぬ。少しは落ち着いたらどうだ。」
「もう、メンフィスったら。・・・だって、こんなに素敵な風景なんですもの。なんだかとっても嬉しくって。 ねぇ、下まで降りてきていいでしょう?間近に海なんて本当に久しぶりなんですもの。」

待ちきれない風情のキャロルの腕を解き、彼は穏やかな笑みを口元に浮かべた。


「・・・・・外はまだ日差しが強い。砂もかなり熱く焼けているであろう。気をつけよ。」

身に着けていた豪奢なマントや冠をとり、もっと身軽な肩布をまとう。
流れ落ちた見事な黒髪を軽く後ろへ梳きやりながら、メンフィスはキャロルの後ろを優雅に追った。

下エジプト・ナイル河口付近
酷暑の厳しいテーベから夏の避暑地として多くの貴族達はここ地中海に面する場所に別荘を建てていた。
特にひときわ目立つこの白い石の外壁が目に美しい海岸の建物は王族のもの。
それは先王ネフェルマアト王以前から代々王家の人々によって使用されているヴィラだった。

「う〜ん♪ 地中海を独り占め〜〜♪♪」

両手を広げて眼前一杯に広がる海を前にキャロルがはしゃいでいる。
水際でパシャパシャと波とたわむれて。

跳ね返る水しぶき
そよぐ潮風
キラキラ輝くその水面と彼女の髪
強い日差しに青い目を細め、水平線から空へと視線をあげる。
そしてしばらくの間、キャロルは空を飛び交う海鳥たちを眺めた。
どこまでも透き通った青い空に心を遊ばす。

「古代も現代も・・・この海や砂浜の風景は同じなのね。。。。」

空を見上げたままくるりと海に背を向け、背後から近づいて来ていたメンフィスに笑いかけた。

「そなた・・・・ここには初めて来たのであろう?」
「ええそうよ。古代ではね。」
「?」
「ずっとずっと以前・・・ほんの小さい子供の時、わたし地中海沿いのアレクサンドリアで過ごした事があるの。」
「アレクサンドリア?」
「ん〜・・・そういう名前の町があったの。」
「ほう・・」
(・・・・未来の「ここ」にね。)

「・・・それがわたしにとって初めての海でね。すごーく楽しかったわ。」

メンフィスはキャロルの幼い頃の愛らしさを思い描き、更に愛しげな視線をキャロルに向けた。

(まこと目の中に入れても痛くない・・さぞかし可愛い幼子だったことだろうに。)

彼女はどんな子供だったのだろう?
髪は長かったのか短かったのか・・
出会った頃のそなたは肩先までの短い髪だったが・・
愛らしいわがままで周囲を困らせていたのだろうか。

「それでね。兄さん達とバーベキューしたり、ボートに乗ったり。」
「(ピクっ)!」
「そういえばあの頃は朝から晩までくたくたになるまで遊んでたわねぇ。ふふっ」
「・・・・・・・」

邪気など一切無いことは分かっているのだが・・・・
魚釣り、舟遊び、水辺での夕涼み・・
キャロルの昔話には必ずと言ってよいほど 『ライアン兄さんがね』 とくっついてくる
子供の頃のことだろうとなんだろうと自分を差し置いて兄の思い出話をされるのは・・やはり気にいらぬことこの上ない。
まちがいなく美少女であったはずのキャロルの少女時代を独占していた男たち。
そう思うと嫉妬するなというほうが無理な話。

純粋に昔を懐かしんであれこれ昔話を続けていたキャロルだったが、ふと気づく。

・・・・・・メンフィスへの 『NGワード』 が連発 /////

(・・っ またやっちゃった・・かも・・・)
だまってはいても彼の身からは不穏に忍び漂う暗雲の気配が・・・

「あ〜、え〜っと・・・ メンフィスって、昔からよくここへは来ていたの?」
「・・・・いや。・・・・・二三度ほどだな。確か。」
「えぇっ!たったそれだけ?」
「・・・・・・用がなければ寄る必要もなかろう。」
「でもそんな、もったいないわ。じゃ、これからは毎年来ましょうよ。ねっ。一緒に。お願いよ(ぴとっ)」

やわらかい体が真正面から甘えて密着してくる。
・・わざとでもこういう感じは悪くはない・・・。
腰に手を回し軽く支えながら、丸みを帯びた華奢な彼女の背をなでた。
自然とその手つきは優しいものとなる。

「・・そなたが気に入ったのならそういたそう。」
「本当(^^)?」
「・・・・・ただし」

少し力を加えてキャロルを両腕の中に閉じ込め、鼻先がぶつかりそうなほど顔をよせた。
ちょっとの沈黙に彼女は生唾をのんで超至近距離の黒硝子の奥を見つめ返す。
はぁっ・・と、可愛らしく息をはき、こん・・っと自分と彼のおでこをあわせた。

「もう・・・言いたい事なんてわかっているわよ。」
「ほう。・・申してみよ。」
「『わたしの家族のことは口にするな』・・でしょう?」
「・・・・・・・『ライアン』は、だ。」
「・・ホントに、しかたのない人ね。わたしの兄っていうことは、今じゃメンフィスにとってもれっきとした『お兄さん』になるのよ。義理でもちゃんと貴方と兄弟なんだから。会えなくてもね。いい?もう貴方にはライアン兄さんとロディー兄さんの2人も『兄』がいるの。親戚なのよ。」
「・・・・・・・・・・(←いわずもがなですが超不機嫌です)」
「わたしのママも貴方の『お母さん』だし。・・・・・・そうよね・・実際に貴方と会わせてあげることができたら、ママきっとすごく喜んでくれると思うわ。」
「ママ・・? そなたの母女神か」
「ええ。だってママにとってはメンフィスが『3番目の息子』になるんだもの。そうよ。嬉しいに決まってるじゃない。」
「む、息子・・・・・・・」

メンフィスの表情がへんに豆鉄砲をくらったように一瞬固まった。
非常に複雑な・・・深刻さも重なった顔で。
キャロルを見つめ返してさらに言葉を詰まらせている。

自分がキャロルの兄達の(特にライアンの)弟となるのは非常に不愉快な気分だが、ナイルの女神の息子であるのは誠に光栄なことだ。
ただ・・今まで具体的に思い描くことはなかったのだが、想像するとなにやら妙な気分になる。
この自分に2人の兄と母・・・・
どちらも今まで全く経験のない存在。
なんといっても実際の血縁は父と姉の二人だけだったのだから。
メンフィスには「親戚」の存在自体、生まれてこのかた縁が無かったこともあり、具体的に考えるとどうも変に居心地が悪い。

しかも・・・・
あの『ライアン』が自分の兄だときた・・・
考えれば考えるほど苛立ちがつのる。

《フフフフフ・・・ そなたはわたしの 『弟』 なのだよ。 アーっハハハハハハハハ》
・・と、 見たこともないキャロルの兄達の不遜に笑っている声が脳裏に聞こえるような気さえしてくる・・・

「・・・・・・・メンフィスってば・・・・眉間にしわ」

そっとキャロルが額を撫ぜる。
メンフィスはその手をとって細い指先に唇をよせ、ふわりとキャロルにくちづけた。

「・・ふんっ・・・どうせ一生会えぬなら、そんな親戚などわたしにはいないも同然ではないか。」
「!」
「そなたの兄どもとて恐らく・・・・・・・ん??」
「・・・・・・」
「キャロル?」

シュン・・

急にだまりこくってしまった様子に言葉を途切れさせ、メンフィスはうつむくキャロルの顔を横から覗き込んだ。

「どうしたのだ? いかがいたした?」

「・・・だって・・・(すんっ)」

「・・・・なっ・・・・?!?!」

青い瞳が潤んでいる
それを目にしてメンフィスはギョっとした

(い、いったい何だ?!・・・いきなりどうしたのだ?!)

華奢な両肩に手をそえるが、僅かに震える感触に一層動揺してしまう。
ぽつり、ぽつりと途切れながら、小さな掠れるような声で彼女はようやくその訳を口にした。

「・・・・だって・・そうよ。貴方の言うとおり・・一生・・わたし・・もう二度と会えないのよ。ママにも・・兄さん達にも・・・・だから・・・・だから思い出すぐらいいいじゃない・・・なにも・・・そ、・・そんな風に怒らなくったって・・・」
「キャロル・・!」


涙の影がじわりとキャロルの両目に盛り上がる

(し、しまった・・!!)

―――ズキっ

胸が痛む

キャロルの悲しげな横顔・・・・一番見たくない涙
おもわず口走ってしまった己の失態・・・・・



《一生家族に会えない・・・・・・》

それは・・・・キャロルには言ってはならない禁句だった。




あとからあとからつぅっと零れ落ちる涙

「キャ・・・キャロル・・・・・・・・」

「ご・・めんなさぃ・・・っ 泣くつもりじゃ・・なかっっ・・・・でも どうしてもとまらっ・・・っ」

「お、おい・・キャロル・・・・・」

懐かしく優しい思い出であればあるほど、二度と取り戻せないという悲しみは何倍にも増幅して跳ね返りキャロルの心に襲い掛かるのだ。
とうとう、その思いにこらえきれなくなって、完全に顔を覆って泣き出してしまった。

分かっていたはずなのに・・
これだけは気をつけていたはずなのに・・・

己自身が・・・・愛しいキャロルの心に刃(やいば)をたててしまった――

――――― 失言だ。

キャロルの一番弱い・・
完治しにくい傷口を切り裂いてしまったのだ。

(なんたることだ・・・)



メンフィスには・・どうしても拭えない負い目がある―――



《わたしはこの世界で一人ぼっちなのよ!!》

昔そういって泣きじゃくるのを何度も無理やりに宥めてきた。
あの・・かつて目に涙をいっぱいためて胸をたたいて叫んだ彼女の姿は今も脳裏にやきついて離れない。

あの時も・・崩れ落ちる彼女をただ抱きしめて ・・・可哀想なほどに震えていた体をあたためて・・・
帰りたいと叫ぶ唇を無理やり封じ込めて―――

細い肩を震わせて、それでも彼女は何度も逃げた。
かつての・・1人きりの心細さにとらわれていた頃
出合ったばかりの頃のキャロルはいつも・・ そうして家族を思って泣いていた

〈家族の影が見える限り・・この娘を手に入れることができない・・〉
―――そう思った。

だから・・
このエジプトに・・・自分の側にその身をつなぎ止める為に、己は彼女に故郷を捨てさせた。
それは――― まぎれもない事実。

「・・・・・・・キャロル」

声も出さず耐えるようにうつむき震えるキャロルをどうしてやればよいかわからず、《あの時》のように・・胸の中に抱き寄せ、小さな背を抱きしめるしか出来なかった。
そんな自分がどうにもまた苦しく、胸が張り裂けそうに痛んでたまらない。

ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めてキャロルを押し包む。
己の頬を彼女の髪にうずめるようにしながら呟いた。
ただ愛しくて・・切なくて・・・

「わたしがいる。そなたの側にはわたしがいるではないか。キャロル・・・・・・・」
「・・・・・・」
「よいか・・そなたの家族はわたしだ。・・・・わたしがそなたの兄にも母にもかわりになろうぞ。だから・・・・だから泣くでない・・」
「代わり・・に・・・・?」
「ああ。」
「・・・・・メンフィスがママの・・?」
「そうだ。」
「・・・兄さん達の代わりも?」
「・・・・・・・ま・・まぁ、・・・・いたしかたあるまい。そなたの為だ・・なんでもいたそう。」
「―――――・・・」

しばらく涙にぬれた目のまま、彼女はじっとメンフィスを見上げていたが・・
何を思ったか・・・・・キャロルは自分の両手をふいにメンフィスの両頬にのばし、そして・・

「!!っっ」

ぷに〜っと横に頬がひっぱられた・・・・・・。

今何をされたのか・・・
・・というか、何をされているのか?!?!
思わぬ妃の行為に思考と体が硬直する。
生まれてこの方これ以上ないほどメンフィスは仰天した。

「なっなっ・・何をひゅるっ!! ヒャロルっ!!」

目じりにのこっていた銀色の涙
それが ふっと・・やわらかく緩んだ

「!」
「・・・・・・くすっ」

ぽろり・・と、一適の雫が雪肌をつたっておちた。
だが、その頬は淡く優しく微笑んでいる。

泣きながら、キャロルはうっすらと笑みを浮かべていた。
その笑みが・・・だんだんと明るさを増していく。


「・・・・・ うふっ(^^)」
「うふっっ ふふふっ うふふふふっっ♪」

端正だったはずのひしゃげた頬
・・でも、それでも、なぜか不思議と秀麗な夫の顔
そんな・・なんとも世にも珍しい美貌・・・ 

(兄さん達とはまた全然違うわね・・・・)

それをとっくりと眺めながら、ようやく彼女はメンフィスの頬をひっぱっている指をはなしてあげた。

その時のキャロルの目元には、明らかに温かいぬくもりに溢れた微笑みが浮かび上がった。


「ごめんなさい・・・・・。せっかく素敵なヴィラに連れて来てくれたんですものね。」
「な・・・なんなのだいきなり・・  そなた・・」
「だから、ごめんなさい。」

そっと今度はなでるようにメンフィスの頬に両手を置いた。

「痛かった?」
「・・・・い、いや・・・」
「・・・・・(にこっ)」

「そなたというヤツは・・・・一体何を考えておるのか・・・・・誠に・・驚かされてばかりだ・・・・・」
「・・そう?」
「このわたしを・・・・・ 全く・・他のものならとっくの昔に命はないぞ。」
「そ、そうかも・・ね。(^^ゞ ・・でも・・――――メンフィスのほっぺって意外とやわらかくってよく伸びるのね。すごい大発見♪(ぷにっ)知らなかったわ。」
「なっ! このっ やめんか!」
「ふふっ♪ おもしろ〜い。(^^)」

―――よく遊びで頬の引っ張りあいっこをしていたのよ。
楽しくって・・。

燦燦と日のふりそそぐビーチで・・兄さん達ともふざけあって頬をひっぱりあうゲームをした。
側には走り回る仲の良い兄妹たちを見守る両親がいた。
波間には光る風が吹いていた。
潮の匂いのする・・幸せな家族の思い出。
泣いたり笑ったり忘れられない大切な・・・・でも決して消えることのない優しい思い出―――。

それでいいと思い切ったはずではないか。
思い出は決して消えないのだから。

(ありがとう メンフィス・・・)

会えないのは・・確かに寂しいけれど・・・・
だからといって・・全てをメンフィスが代わりをする必要はないのよ。

それよりも・・新しい思い出を・・・・メンフィスといっぱい作りたい。
昔の思い出に負けないくらい幸せな。そう、もっともっと、あふれるほどの幸福を・・。


「・・・・・覚悟いたせ・・それだけの無礼をはたらいておいて、ただで済むと思うでないぞ。」
「・・・そ、そうね。・・・あは? お、怒ってる?メンフィス?」
「おお。しっかりと仕置きをしてやるゆえ、今宵は眠らせてなどやらぬ!」
「・・・でもそんなの・・いつもじゃない(ぼそっ)」
「なに?なんと申した?」
「ふひゃぁっ!」

さっきのお返しにとばかりに、メンフィスが白桃のようなキャロルの片頬をひっぱった。
(・・お!)
ふわふわの・・
なんと形容してよいか分からない弾力感に正直驚いた。
すべすべして綿のようにやわらかいのだが、ぷるんとはじき返すようなみずみずしさもあって。
現代風に置き換えるなら『マシュマロ』のような・・という表現があてはまるのだろうが・・。

(なるほど・・ そういうことか)

キャロルの兄どもは・・この感触がきっとものすごく好きだったのだろう。
たんなるふざけ合いでも。―――相当お気に入りの行為だったはずだ。

ひっぱってみて、初めて気が付いた。

これを知らなかったのがちょと悔しい。

(・・・というか ・・相当憎らしいぞ!!!)

キャロルの体は全て知り尽くしていると自負していたというのに・・思わぬ伏兵に愕然とする。

《ふははははは 甘いぞ・・ まだまだだな》
と・・またどこかの背後で高笑いされているような―――

――――やはり・・なんと言われようと兄どもは許せない。


青い海と同じ色の瞳が笑った。

これは・・私だけの妃だ。
もう誰にも渡さぬし、誰よりも彼女の全てを独占したい。
そなたの全てが知りたい・・・

つまんでいた指を離してやわらかく頬をつつんでやると、キャロルは輝くように微笑んで、くすぐったも甘く優しい声で 『愛しているわ』 と囁いた。





しばらく潮風の心地よさを楽しみ、ぐるりと白浜をめぐった後、二人はヴィラに向かってゆっくりと砂浜を踏みしめながら波間を歩いていた。

「きゃっ・・・」
砂に足をとられて少し不安定になるたび、キャロルは嬉しそうに腕にすがりつく。
時折、落ちている貝殻を拾い
楽しげにカモメを指差し
風に流れる髪を手で押さえ

(ふっ・・)

何気ないその姿が
キャロルの仕草全てが堪らなく愛しい―――

どんな瞬間もこの目に・・記憶にとどめたい。
自分が誰よりも一番キャロルの事を見つめていたい。

「毎年ここに来ましょうね。約束よ。」
「ああ。」
「絶対ね。」
「・・・・・うむ」

そっとつながれたキャロルの手・・

「それでね、次に来るときは・・」
「・・・・・・・ん?」

恥ずかしげにうつむいて・・
勇気を振り絞るように
小さな指がメンフィスの手を遠慮がちに握り締める。



「次に来る時は・・・・・・家族が・・増えているといいわね。」


見上げてくる切なく潤んだ瞳が、彼の鼓動を激しく波打たせた。
青く深い神秘のメディタレィニアン
己を水底深く誘いこみ、永遠に溺れさせる・・青き水の愛しき女神


その手を強く握り返し、引き寄せ、誓うように唇を寄せた。
ふつふつと湧き上がる体中が疼くほどの愛しい想い・・・
・・・・・たまらなくなって、その場で激情のおもむくまま力いっぱいキャロルを掻き抱く。

「・・・・・叶えてやるとも。必ず! ・・・・・今すぐいくらでも協力してやるゆえ安心いたせ。」
「えっ・・!」
「早速 『準備』 をいたそうぞ! さあ!早くまいれ!!」

真っ赤に赤面した妃の足元を掬いあげ、メンフィスは軽々とヴィラの階段を駆け上がった。



Fin.





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