秘 密




後日談

(本編のラストに物足りない貴女へ (^^)  おまけのぷち日常風景です)



王宮に新しい噴水の庭ができあがり数日・・・
新人研究員も技師楼の生活にもようやく慣れてきた午後の休息のひとときのこと。。。



「えぇ〜っっっ!!!ラシードさんって子供さんがもう7人もいるのっ???!!!」
「・・・田舎では普通でしょう?娘が5人に息子が2人です。」
「7人どころか・・・なんと来月8人目なんやで〜こいつんところ。」
「は、8人目?!?!」


研究室の一角でクレオことキャロルの仰天の声があがる。


独身だとばかり思っていたラシードがすでに7人もの子持ちのパパであることを聞き、信じられないとびっくり。
かつ、アルにも実はもう3人の幼い娘がいるらしい。

「ラシードんとこはほとんどピッタリ年子やもんな。ほんま『マメ』やろ。子作りまで完璧な計算でやるんやからたいしたもんやで」
「『愛』の賜物といってくれ(←大真面目)」
「はいはい、さいですか。・・・しっかしまた賑やかになるこっちゃな。」
「ああ。・・・・・だから来月は俺、実家に子供の面倒をみに帰るからあとは頼んだぞ。」
「へいへい。奥方さんとごゆっくり。」
「ラシードさんのご実家って?どこなの?」
「サイスです。下エジプトの最下流あたりですよ。家族も親戚も全員そこに住んでいます。」
「知らなかったわ・・・・・ラシードさんって『単身赴任』だったのね・・・・」
「は???」
「アルさんは? アルさんも一人でテーベにいるの?」
「いや、俺は嫁さんともどもこの近所に住んでる。うちのチビちゃんらはまだちっこいからなぁ。かわゆいし美人やから攫われても困るしまだ外には絶対出さへんねん♪」
「おまえみたいなガサツな奴に似てなくてよかったな。」
「そーや♪みんな嫁さんそっくりの別嬪やねんで♪♪♪ 一緒に水浴びするんが楽しいてな〜♪♪ ええぞあれは。もちもちぷるぷるのちっこいお尻が3つ並ぶと特にかわゆいねん。自前でハーレムやハーレム。」
「莫迦かお前は」

本当に娘たちがかわいくって仕方が無いらしい。
アルの親ばか全開の姿がまた滑稽なほど可笑しい。
大柄のごつい体でメロメロに嬉しそうに娘たちの話をする。

「いいなぁ・・・・・わたしもはやく赤ちゃんが欲しいな・・・」
「相手がいればすぐ出来ますよ。(笑)ところで・・いい人はいるんですか?」
「ええ。」
「え・・・!!! ほんとに?!」
「だって結婚してるもの。」
「・・そ、そうなんですか? ・・・・(絶句のラシード)それこそ意外な・・」
「・・・・なによ?その驚きは」
「えー・・・いやぁ、正直意外で。へぇぇ・・お嬢さんにだんな様が・・・。・・・それはまた『すごく理解のあるご主人』なんでしょうねぇ。。」
「・・・・・え?」
「そうでしょう?・・・でないと貴族でいらっしゃるとはいえ『ここ』の試験を受けるなんて許してもらえないでしょう?普通。」
「あ・・・!。・・・ええ。・・・・そう。そうね。」
「じゃあ、大丈夫。すぐ授かりますって。それだけ理解のある『優しい』ご主人なら問題ない。お嬢さんだって若いんですし、生まれだしたら弾みでポコポコ出来ますよ。(ニコニコニコ)」
「え・・そうな・・の?(困惑)」
「ああいうのはコツでもなんでもない。気力と継続。毎日励めばそのうち当たります。ご主人もまだ若いんでしょう?」
「・・・・・・・は、はぁ・・////。」
「・・・なんちゅう直球なやっちゃ(ファラオに聞かれたら殺されっぞ・・・汗) ・・・もしかしてお前、そのまま9人目できるまで向こうにおる気か?」
「実はもうちょっと男の子が欲しいんでね。 ま、俺はそれだけがんばって続けられる『愛』があるから大丈夫さ。(笑)」

8人目まで授かった経験豊富(?)なラシードに言われると信憑性ありすぎだ。

(本当に愛妻家なのね・・・)

思わず彼の奥方にも会ってみたい気もする。

「そうかぁ・・・結婚してるんなら『お嬢さん』なんて呼んでいたら失礼でしたね。『奥様』って呼んだほうがいいでしょうか?」
「えっ?!ええええっ!!!!」
「お、『奥様』・・て、ラシードおまえ(汗)・・・いきなり俺らがそんな言い方したらまた妙やんけ!」
「変か?」
「変っちゅうか・・・・いや、間違っちゃおらんけど・・・。・・・・聞きなれへんうえに言い慣れへんわ。(ほんま知らんっちゅうのは怖いもんしらずや・・・)・・・第一、おやっさん達が呼び方変えへんやろ?」
「ああ、それもそうか。・・そうだな。じゃあ、失礼ながら今までどおり『お嬢さん』で宜しいでしょうか?」
「は・・・はい。それはもちろん・・・・。こちらこそ(ぺこり)」








「・・・・・・っていうことがあったの」
「ふん・・それで?」
「だから・・・・・・自分でびっくりしたのよ。『奥様』って呼ばれることに・・・すごくびっくりして・・・・。うろたえちゃったことにまた驚いて・・・それで私って・・・ずっとそのこと認識してなかったところがあるんだって・・・改めて思って・・・・。」
「・・・・・・・」
「いまさらだけど・・・・・なんか・・・すごく・・びっくりしたのがショックだったの。」

がばっと枕元から起き上がり、うつむくように座り込むキャロル
今日の報告をメンフィスの腕枕で話していたのだが、アルとラシードから言われた『奥様』との呼びかけに、ささいな事ではあるが衝撃を受けた事をぽつぽつと話し出した。

「わたし・・・・・・貴方の妻なのに・・・貴方の妻になって何年も経ってるのに・・・・・なんでそんなことでこんなにびっくりしたんだろうって・・・・」
「・・・・・・・」
「『お嬢さん』って呼ばれなおして・・・安心した自分も・・なんだか変で・・・嫌な感じで・・・・・・・」
「・・・・キャロル」
「わたしって・・・・・やっぱり嫌なくらい考えが子供なんだわ。・・・馬鹿よね本当に・・・」
「キャロル・・・」

後ろからメンフィスの腕がキャロルの胸元に回される。
背中から抱きすくめられるようにキャロルの上半身はメンフィスの胸の中におさまった。

「・・・女というものは普通・・より若くあることを望むものだろう?子供だろうが娘だろうが若く見られればより喜ぶものではないのか?」
「・・・・・・そういうことじゃ・・・・」
「よくわからぬな。娘と呼ばれてどこが悪いのだ?そなたは誰よりも若くしかも美しいのだから普通より若く見られて当然であろうが。」
「きゃっ」
「肌も・・・こんなに柔らかい。・・・どこもかしこもすべらかで・・・吸い付くような手触りぞ」
「め、メンフィスっ!!・・・ぁん・・・」
「子供なものか・・・・・・そんなに不安ならば・・・そなたが女であることを十分に思い出させやろう。」

胸や腰・・・足へとメンフィスの手のひらが愛でるように滑る

「メ・・・・メンフィス・・・っっ」

甘い口付けに言葉も奪われる
何も言えない上に、次第に全身を縛り付けられたかのような快感で閉じ込められて、意識もどこか朦朧と遠ざかってしまう・・・・分かるのはただメンフィスの熱い体の感触だけ
何度目かの脱力か分からない頃、荒い息遣いが収まるまでメンフィスの腕の中にまどろみ・・・・そしてふわりとキャロルがつぶやいた

「ねぇ・・・・メンフィス・・・・・」
「・・・・・なんだ?」
「・・・・・・・・・あのね・・・・・わたしね・・・・・」
「・・・・・・・・」
「どうしても欲しいものが・・・あるの・・・・」
「キャロル?」
「・・・・2つあるの。・・・なんだと思う?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・一つ目は貴方よ。」
「なにをいまさら・・・・」
「・・・ふふっ そうだけど・・・メンフィスはやっぱり何時でもわたしの中では一番大切で・・何時でも一番欲しいものなの。ずっとずっとね。・・・何があっても絶対に離さないから。・・・それからもう1つはね、」

ふいにメンフィスは両腕にキャロルをぐっとかき抱いた。

「わたしにも欲しいものが二つあるぞ。」
「・・・・えっ?・・・・何?」


「そなた自身と・・・・・・・そなたとの和子だ。」
「!」

正面から顔を覗きこんでメンフィスはじっとキャロルを見つめた。

「そなたのもう1つは?」


「わたしも・・・・・わたしも・・・・あなたの赤ちゃんが・・・欲しいの・・・・」

「・・・・そうか 同じだな。(ぎゅっ)」

「貴方と・・・・わたしの・・・・」
「ああ。・・・キャロル・・・・・。」


「・・・・出来ると・・・・思う?」
「・・・・聞くまでもないであろうが。・・莫迦者。」


「そういえばね、ラシードさんってね、もう7人も子供がいるのよ。」
「・・・」
「今度、8人目が出来るんですって。びっくりでしょう?」
「・・・・・・・・ふん」
「凄いわよね・・・・」
「・・・・・・」
「メンフィスと同じぐらいの年なのに・・・そういえば彼いくつで結婚したのかしら・・・?みんな年子だっていってたし・・・」
「そなた・・・何が言いたい・・・」
「え?」
「・・・わたしが男として奴に劣っているとでも言いたいのか」
「えっ!! そ、そんな事いってないわよ!!違っ!!」
「何が違う!!」
「そ、それを言うなら、わたしにも責任が・・・・!」

急に肩先を押さえつけられ身動きできなくされた。

「きゃぁぁ!!!!メンフィスっっ!!」

不機嫌きわまりない様子で唇を重ねられ、もがいてもどうしようもない。
がっちりと上から押さえ込まれ、そして凄みのある声でメンフィスはキャロルを見下ろした。

「分かった。・・・・やはりしばらくそなた外出禁止だ」
「は?!」
「奥宮で『王妃』としての仕事を全うしてもらおう。・・・・朝、昼、晩と『子づくり』に励むゆえ。わたしもしばらく国事を控えよう。」
「ちょ、ちょっと待って!何よそれ! わたしやっと慣れてきてついこの間に本格的にお仕事を始めたばっかりなのに!また急に行けなくなったらそれこそおかしいじゃない!明日には具体的な懸案の研究も始まるって・・・」
「そんなもの放っておけばよい。何よりそなたとわたしの願いの方が先だ。すぐにも叶えねばな。・・・・8人か、最短でも8年かかるな。さぁ、急いでとりかかるか♪」
「な・・・・!何張り合ってるのよ!!8人って・・・・わ、待って待って!!!」
「別に遠慮するでない。」
「遠慮なんてしてませんっっ!!きゃぁっっ!そんなっ!!待って!これ以上されたら明日本当に体がもたないわよぉ!!!」
「ならば出かけなければよいではないか。ずっと奥でおとなしく寝ておれ。」
「あんっ・・・・・もう・・・・メンフィスの意地悪・・・馬鹿馬鹿!だめだったらぁ〜〜!!!!」
「ふん・・『大好き』の言い間違いであろう?(笑) 確か何より一番にわたしが欲しいのだったな♪」

「愛しているぞ。 キャロル。 ・・・・・わたしの全てはそなただけのものだ。望み通り全部くれてやる。私の一生分をな。」

聞く耳まったく持たずで嬉々として抱きすくめながら笑うメンフィスに、あきれてキャロルも脱力して、そして笑った。

「もう・・・・しょうがない人ね。」


「・・・・・分かったわ。じゃあ、貴方のこと全部もらうから。わたしの命令も聞いてちょうだい。」
「命令だと?」
「そうよ。貴方の全てはわたしのものなんでしょう?だったらお願いじゃなくて命令するわ。」
「・・・なんだ?」
「・・・・・太陽の出ている間は国事に専念すること。わたしの大好きなファラオは偉大な名君であって欲しいもの。そのかわり・・・・・」
「キャロル・・」
「そのかわり、夜は私を全部あげるから。必ずわたしと一緒にいてね。」
「・・・・・・・」
「わたしを、夜一人にしないこと。・・・・それから・・・・・・優しく・・してくれること。」
「・・・・・・いわれるまでもなかろう。」
「・・・・んっ!」

「・・・太陽(ラー)がおらぬ間はそなたがあるじ・・ということか。よかろう。・・・・・・・・・・・・まだ夜は明けておらぬからな。存分に堪能させてやる。」
「・・・だからどうして命令形なのよ?」
「ふん・・・・そなたの「命令」通り優しく抱いてやるゆえ・・・・おとなしくいたせ」






--- 後日 二人の望みが叶ったかどうかは・・・・・・それは 「ひ・み・つ」 。



Fin.







これで本当のおしまいです。 ありがとうございました。 <(_ _)>PLEIADES拝