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秘 密 |

10
「・・・・・・・・なんだと?」
いぶかしげに眉根を寄せ聞き返す。
協議の終了後、メンフィスのもとに先日密かにキャロル付に増員した親衛隊員の一人から報告がもたらされた。
「真か?」
「はい・・・・・ ですが・・ただ宰相閣下のもとから往復されるだけで、それも言わば宮殿内でのことですし・・・これといってそこから別の場所へ行かれるご様子ではございませんでしたが・・・・。」
「・・・・・・」
ガタンと席を立ち上がり、厳しい視線のままメンフィスはバルコニーへと背を向けた。
「・・・・・・・・・キャロルのやつめ・・あれ程申しつけたに・・性懲りも無く!」
しばらくの沈黙のあと、メンフィスはくるりと踵を返し、足早に部屋を出る。
「ファラオ?」
「技師楼へまいる。」
「メ、メンフィス様!?」
はたと一瞬その足を止めてメンフィスは脇につき従う将軍に目を向けた。
「・・・・・・・ミヌーエ、・・・そなた知っていたな?」
一呼吸の沈黙
それだけで肯定をしたようなものだ。
実直な彼は王に偽りを口にすることは出来ない性質だった。
キラリと冷たくひらめく王のまなざし
将軍は頭を小さく下げて『諾』と示した。
「・・・・・・・なぜ黙っていた?」
「・・・・キャロル様にはキャロル様のお考えがあってのこととお見受けいたしましたゆえ。・・・・危険な事でないならば、少しご様子を影で見守って差し上げてはいかがでしょうか?」
「見守るだと?このわたしに黙って、私以外の男どもと行動を共にすることをか!!」
「・・・・はい。・・・・出来ることならば。」
「ふんっ・・・・」
ばさっと幅広のマントを翻し廊下を蹴った。
「・・・・それはあやつの態度次第だな。」
(―――あとできちんと相談するから・・)
あとで・・だと? ・・一体いつ話すつもりなのか
キャロルのことだ・・とっくの昔に夢中になって念頭からすっかり消えているに決まっている
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