BACK HOME
ライセンス
4
◆第2段階◆ 実技 「路上教習」 (教官 メンフィス王)
「ナイルの王妃様だ〜っ!!」
「おーい、姫様がこちらにおいでになるぞーっ!!」
「例の御乗馬のようだぜ!メンフィス様とご一緒だ!!」
「まぁ。そうなの?ねぇねぇ見に行きましょうよ!!!」
テーベの街は既にたいへんな騒ぎであった。
王妃の乗馬の噂はすっかり国中に広まっている。
だがその姿を見たものはテーベの住民といえどほとんどいなかった。
それがこのたび初めて城外にお出ましということで警備兵たちがそのルートをガードにかかったため、民衆はこれは本当に王妃がおいでになると確信し、一目その姿を見ようと余計に殺到していたのだった。
「な、なんなの?この人だかりは?!!」
「そなたの人気は誠に素晴らしいな。さぁ、まいるぞ」
「えぇっ?ちょっと待ってよ!メンフィスっ あんなに人がいる所を通るの?!」
「他にどこがあると言うのだ?私がついておるから安心致せ。そら、来い。」
メンフィスは自らも騎乗しながら、片手にキャロルのシシィ号の補助手綱をひき、馬の頭一つほど前を先導する。
本人(キャロル)はどうであれ、これは遠めに見ても美しい光景だった。
雄雄しいファラオと寄り添う黄金の女神の優雅な騎乗姿に、民達からはほうっと溜息がもれる。
そしてその後に湧き上がる大歓声の嵐。
「メンフィス様万歳―!」「ナイルの王妃様―っっっ!!」
押し寄せる群衆にひきつるキャロル。中には兵士を振り切って飛び出してくる者までいる。
(いや〜んっっっ!だめよ! みんなお願いだからあんまり近寄りすぎないで〜〜〜っっ 怖すぎるわよぉぉ〜〜っっ!!)
ようやくここ最近乗馬の形になってきたとはいえ、実は、小刻みな進路変更はまだ苦手中の苦手なのだ。
手綱を握る手がガチガチに緊張する。
「少しぐらい手を振って答えてやらぬか キャロル。」
「そ、そんな余裕なんかないわよっっ」
はん泣き状態のキャロルの様子にメンフィスは可笑しそうに笑う。
「今日は道なりに街を行くだけぞ。もっと楽に致せ。そのように固まっていると余計に危ない。」
「だ、だって、だって・・みんなが見てる」
「そんなことを気にしておるのか?ならば、私だけをその目に追いかけよ。他に目をくれるな。よいか?」
コクっと神妙に頷き返す。打てば響くようななんとも素直な反応だ。
(いつもこうだとよいのだがな・・・・)
「まって、まってメンフィス!!速いわよっっ」
必死になって、寸分も離れず後を追いかけてくるキャロルがたまらなくいとおしい。
頬を紅潮させながらピッタリと側方について来ている。
「よしよし。よいぞキャロル。」
「ほんと?」
「おお。最高だ。」
「嬉しいわっ!メンフィス」
多少意味合いはずれてはいたが。。。。互いに幸せに溢れるひと時であった。
<めでたしめでたし。という事で・・・The END( 笑 )>
2001年 「ししぃの館」投稿作品
BACK HOME
© PLEIADES PALACE