愛の奥宮殿へ  

chapter 7

〜 楽しい食卓 〜
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【看病の巻】

「・・・まだ熱があるな・・・よい、そのまま寝ておれ。―――どうだ?これくらいなら口にできるであろう?」

そっと口元に皮まで丁寧にむかれたオレンジが差し出される。
ただ、それが差し出されるまでが大変だった。
とにかく似つかわしくなかったのだ。
メンフィスが一心にオレンジの皮を薄皮まで一つ一つとりはずしているのだから。
実は見ていて噴出すのをこらえる方が大変だったのだ。
外見が勇猛で知られるとおり威厳漂う風格を持っているため、ちまちまと作業を続ける様子がキャロルには可笑しくてならなかった。

「!?どうした?・・・気分でもわるいのか?」

うつむいて笑いをこらえているキャロルを、心配げにみつめるメンフィス。

「ううん。大丈夫よ・・・ありがとう」

慣れない作業を経て、その指から差し出された果汁たっぷりのオレンジ
とても・・とても甘かった。

「まだまだあるぞ♪」

嬉しげに美味しそうに食べるキャロルの姿に、また気を良くして2つめのオレンジに手をかける。愛しいキャロルのために・・・。





Fin.




愛の奥宮殿へ