愛の奥宮殿へ 
chapter 3
〜兄・来訪〜
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C 「ねぇ!二人とも!!もういいじゃない!ひきわけよ。ひきわけ! ねっ。」
M 「な〜・・・にぃ〜・・・・お〜っっ!!!まだまだだっっ・・っっ!!!」
R 「・・っっ!!や・・せ我慢は・・よく・・・ない・・ぞっ!!!!」
M 「だれがっっ!!!・・・く〜ぉ〜の〜っっ〜〜っっっ!!!」
R 「!!!こしゃくな〜〜っっっ!!!」
C 「もうっメンフィス!!兄さんったら〜〜〜っっ!!!」
―――エジプト王宮・奥宮殿・・・
毎度おなじみ騒動の窓口、ここはキャロル王妃のプライベート広間
そこで、ファラオが一人の青年と火花をちらしていた。
永遠のライバルともいえる「ライアン」を相手に。
それも・・・・・腕相撲で・・・・・・・
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事の発端は、エジプト王宮に思いも寄らぬ珍客が現れたことにはじまる。
ライアン・リード
ロディ・リード
この二人がいきなり謁見中の王宮広間にふってあらわれたのだ。
文字通り、空中から落ちてきたかのように・・・
ライアンを下敷きにして、ロディがしりもちをついているような格好で、謁見の間中央に。
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ずざざざざーーーーっっ!!!!
「いったーっっ!!!・・・うわっ、に、兄さん、ライアン兄さん、大丈夫?!」
「・・・・・・う・・・ ろ、ロディ?! くっ!・・・い、今のは一体・・・???」
どさーーーっっと舞い上がる淡いほこりのカゲから二人の長身の異国の男が浮かび上がる。
いち早く周りをみまわしたのは、上に乗っかっていた蜂蜜色の髪をした温和な顔の方だった。
「!!!!・・・ね、兄さん・・この『どこでも』切符・・本当に威力があったみたいだよ・・・・」
「何を寝ぼけたことを言っている!とにかくどけ!・・・っ痛ーっ・・・」
「信じられないけど『目的地』なんだってば!!・・・ほ・・・ほら、・・・・あれ・・みてよ!!」
「・・・!!!」
周囲騒然・・
兵士呆然・・・・
なにより、玉座に座すファラオが目を剥いた。
「な!!!!!何者!!!」
「う・・・・うそっ!!!に、兄さん!!」
同時にかさなる2つの声。そのうち1つは明らかに違う声音を発していた。
王妃の嬉々とした感涙の声・・
思わずギョッとするメンフィス
そして静止するまもなく、キャロルはあっという間にメンフィスの側から走り去り、その妖しき出現者になりふり構わず抱きついていた。
「兄さん!兄さん!兄さん!兄さん!兄さぁ〜〜〜んっっっ!!!!!」
「キャロル!!!!キャロルなのか??!!本当におまえ・・一体どうして!」
キャロルは迷わず黒髪の男の方に飛びつき、ひし・・と抱き合っている・・
メンフィスのそれこそ目と鼻の先で・・・
「あ・・・・・あ、あ、兄だとぉ〜〜〜!!!!!!!あれがっっ!!!!」
「おおおおおっ ナイルの王妃様の兄君とな!!!」
「なんとっ!! まさに神の御業!!貴公ご覧になられたか?空から現れなさいましたぞ!!」
「あの方たちは神なのだ!!ナイルの姫の兄上さまが御降臨なされた!!」
「おおおっっ!なんと喜ばしいことだ!!!」
「まさに神の一族にあらせられる。ファラオ、エジプトの繁栄はまちがいございませんぞ。お喜び申し上げます」
「おめでとうございますメンフィス様!!!」「おめでとうございまする!!!」
ざわりと色めき立つ歓喜の声
もう、臣下の者たちはリード兄弟をとりかこんで神の一族の到来と、やんややんやの大騒ぎだ。
一瞬の間にこの情報は、なぜかもう宮殿中に伝わってしまったらしい・・。
すでに外でなにやら「わーわー」と喜びの声が騒がしい
何事も異様に信じやすい『素直な』エジプト国民にまで広まるのも時間の問題だろう・・
(なにをそんなにありがたがるっ!!!・・・・キャ、キャロルの兄というだけでっっ・・!!!!)
『宿敵』のあまりにも突如の出現に、わなわなと体の芯から血が逆流するメンフィス。
いまにもばっさりと切り捨ててしまいたい衝動が指先にまで湧き上がっている。
しかし、ここまで周囲が歓迎ムードになってしまうと、ファラオとしても我を押し通すことはできない。
キャロルに至っては、もうとめどなく流れる涙を拭うこともせず、ひたすらに兄を呼びつづけ、人目も気にせず(もちろんメンフィスのことなどおかまいなしに)感動の抱擁にひたっているありさまだ。
(キャロルッ・・・・!!! わ、私以外の男に!!なんということだっ!!!!!)
「・・・・・〜〜〜っっっ!!!」
歯軋りと、額につたう青筋に必死に耐えながら、とにかくメンフィスは場を替えるよう命じた。
ここは謁見の間。国の表玄関のようなものだ。
本当は今にも激情のまま怒鳴りだしたいところだが、へたをしたらどこかの国の間者もいよう。めったなことはできない。
キャロルのとりみだした号泣も、なにより自分以外の男と抱き合う妃をこれ以上人目にさらしたくもない。
エジプトのファラオはかろうじて威厳を残した声をなんとか絞り出し、リード兄弟を奥宮殿まで案内するよう苦々しい思いで臣下に命を下したのだった。
