chapter 29
〜 目覚まし時計 〜
ひんやりした空気に身震いする。
ごそ・・
肩が冷たい。
確か・・この先に・・・・
寝返りを打ちながら、温かい上掛けと温かい「何か」を探す。
無意識に手をのばした先にとても温かい大きなものが・・・
ぎゅ〜〜っっ
すり・・もそもそ
むにゅっ
頬に温かい「それ」があたってやわらかい感触と温度にほうっと一息。
長い髪を寝返りと同時に自分の肩で踏みつけ、ううん・・とむずかりさらにごろごろ・・・
何度か頭を動かして、ようやく気持ちの良い居所を見つけて気をよくしたようだ。
「・・・・・・・」
夜明け前、いつもこれで目が冴える。
肩先で寝返りをうつキャロルの感触。
ほぼ毎日決まった時刻に・・日が昇る少し前頃に、暗がりの中で触れてくる妃の寝返り。
温かくてやわらかくて、すぐにも抱き起したくなる衝動に神経がさらに研ぎ澄まされて・・
すっかり目が覚めてしまうのだ。
覚醒した身も心も・・キャロルを抱きたいと動き出そうとする準備にどんどん鼓動が上がる。
けれど・・・
「うん・・・」
むにゃむにゃと何やら寝言のような吐息とともに浮かべる気持ちのよさそうな幸せな寝顔が夜目になれた瞳に映ると、強く抱きしめたい衝動よりも、そのまますり寄っている頬に自分の腕や胸を貸してやるようにそっと動かすことしかできなくなる。
「・・・・やれやれ 全く・・どうしてくれよう。」
それでも・・この時間が自分はとても好きなのだ。
傍らにある優しい吐息
あたたかい肌
ふわふわと柔らかな綿を腕いっぱいに抱きしめているような甘い幸福感。
すこし体重を押し付けてくるようなこの重み。
こそり・・とすり寄る感触がたまらなく愛しい。
そろそろ起きねばならぬ時刻なのだが・・・・
日が昇るまで・・もう少し・・・
さらりとキャロルの髪を梳り、何度かその手触りを楽しんで唇を寄せた。
Fin.
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愛の奥宮殿へ