愛の奥宮殿へ  

chapter 27

〜 酒 〜
(ミヌーエぷち話)



将軍は酒に酔ったことがない
したたかに飲んで酩酊するなんてところを今の今まで見たことがない。
・・・っていうか、あの人はザル以上のすかすかなワッカなんだろうな。
飲むとなったら、そりゃあ結構な量を飲んでいる。
すすめられた酒は絶対に断らないから、いつもそれなりに飲み干す速度も速くて。
そのはずなんだけど・・・顔色一つ変えずにいつも淡々と酒盃を空にしていくだけだ。
俺なんて普段3杯も空けたらなんとなくフワーっとした感じになるし、正直将軍と一緒の場で飲んだら大抵最初に(情けなくも)撃沈しているそうなんで、その後どうなっているのかなんて全然分からない。


「おい、そのくらいにしておけウナス。」
「・・・・・今日は大丈夫で・・すよ。いつもより気分、いいんで・・ひっく。」
「どのくらいが大丈夫なんだ?・・・・ろれつが回っていないぞ。」
「お祭りの日で・・すから。もうちょっと楽しみましょう・・よ」
「・・・・じゃあ、もう一杯だけだぞ。」
「はい〜♪ 将軍こそ、すっかり・・空じゃないですか。さ、どうぞ〜・・っく」

ミヌーエ将軍は、昔っから気が優しい。
コロコロと泥まみれでメンフィスさまと駆け回っていた頃から、一番の兄貴肌。
武芸もピカイチで顔もよくって女にもてて
それでいて「いい人」でさ。
こんな俺にもこうして気さくにつきあってくれる。
代々将軍家のお家柄なのにさ。ほんと出来すぎ。

なにか一つでもこの人と肩を並べるだけのことができたらなぁ。
せめて酒くらい対等に飲みあえたら・・・って・・・・
思ったんだけど・・・

思ったところで・・ああ・・なんかもう目が回る
やっぱダメかぁ〜・・・・



「・・・・・・今日の記録は10杯でしたね。がんばったなぁ〜隊長!」
「・・・・そのようだな。」
「ウナス隊長って、将軍の酔ったところが見たいそうですよ。」
「・・・・ん?」
「実は俺も見てみたいですね。顔にも全然出ないからホントに飲んでるか分からないんで面白くないですよ。」
「そうそう。・・・大体将軍、酒強すぎですよ。今まで撃沈なんてしたことないんじゃないですか?」
「そうだな。・・・・確かにわたしは皆のように酔えない。何をどれだけ飲んでも・・・よくて気分が良くなる程度だな。これは・・・・・・たぶん血筋じゃないかと思う。」
「将軍の?・・・ということは父君の?前将軍閣下も相当お強い方だったんですか!」
「・・・・いや。『下戸』で有名だったらしいからそれはないな。」
「え・・・・?!」

ってことは・・・・


将軍を取り囲んでいた面々が硬直する。



「まぁ、・・・・・そういうことだ。」



「え・・・と・・・ まさか・・・ あの・・・」

「・・・・・・色々 『伝説』 がある人らしいからな。・・・聞いてみたら面白いかもしれんぞ。」





そしてミヌーエはいつもどおりの穏かな微笑で杯をあおった。

微妙に引きつる周囲の動揺を肴に。




Fin.




© PLEIADES PALACE

             愛の奥宮殿へ