愛の奥宮殿へ

chapter 1


〜ある昼下がり・砂漠の新都にて〜




「う〜ん・・・・」 

「キャロル様、キャロル様?!」

「ああ、どうしよう・・・困ったわ」

「あのぉ・・・・どうなさったんです?先ほどからずっとそればかりですが・・・」

「どうもこうも・・・いいアイデアが浮かばなくって」

「?」

「ねぇ、ウナス、メンフィスって今なにか欲しいものってあるのかしら?」

「はぁ?」

「あ!あの滅多に世に出ないというシリア産の極上の美味しいお酒でもハサンに頼んで・・・!
・・・ん〜〜っ、でもそれって、絶対宴のときには用意されているのよね・・・
ナフテラあたりがちゃ〜んと・・・」

「・・・・・?!?!」



深い溜息一つつき、がっくりと肩をおとしぶつぶつ独り言を続けるキャロルを、ウナスはなんのことやらわからず面食らったまま聞いていた。


「姫?それは・・あの、ファラオのご生誕の宴の際のご計画か何かですか?」

控えめにルカが尋ねる。

「ええ。もう、もう・・・メンフィスったらこんな凄い誕生日プレゼントをしてくるんだもの。私のときはどうしていいか分らないじゃない」

「はぁ・・・・・・・・そう・・・ですね。」(ルカ)

「まあ、確かに、ファラオらしいといえばファラオらしい贈り物ですが・・・」(ウナス)

「大体、考えつくスケールが違いすぎるわっっ!
 この宮殿、広すぎて未だに私、迷子になっちゃうのよ!!」



いま3人が立っているのは、砂漠の新都・『王妃の宮殿』のバルコニー。

背後には、超巨大・且つ、壮麗豪奢な宮殿がドド-----ン・・・・・。

振り返りながら見上げる従者達にも、タラリと汗が・・



(ウ)「約、テーベの都1個並でしょうか・・・・・」

(ル)「とにかく・・・・・広い・・・・・ですよね。」


今も、すぐ隣で伝達係が狼煙を上げている。

詳しくは知らないが、夕食のおかずは何が所望なのかも、これで厨房と連絡できるらしい・・・・


(C)「どこに何があるか分らなくなるから、最近通路に標識を建てたわよ。もう、信じられない!!!」

(ウ)「あ!あれ、便利です。(嬉しそうに) さすがキャロル様。おかげでみんな大助かりで・・・・」

(C)「感心なんかしてないでよ!本当に冗談みたいだわ。池だって・・これどう見ても湖よ!!」



前方に視線を移す3人。

・・・・・対岸がはるかに遠い・・・・いや、見えない・・・。


(ル)「豪快ですね・・・・」

(ウ)「でも舟遊びには最高でしょう?これ、メンフィス様が特にお気にいりの会心作だそうで・・」

(C)「じゃあ、メンフィスの宮殿に作ればいいじゃない。何もこんな・・・ああ・・・もうどっちでもいいわ。」


キャロル、脱力の面持ちでバルコニーにそなえつけられた優雅なソファーに座り込む


「・・・・だから・・・・困ってるの。・・・メンフィスってなんでも思いのままなんだもの・・・。」


はぁ・・・と、またも大きな溜息


顔を見合わせるウナス&ルカ


「姫、何もそんなに御深刻になられなくても・・・ファラオは姫のされる事なら何でも喜ばれますよ」

「そうですよ、キャロル様。ほら、手料理の時なんか、もの凄くお喜びだったじゃないですか!」

「でもっ!でもメンフィスったら、『わたしの時には、そなたの想いを込めた最高の礼をたっぷり貰おうか』なんて言ってるのよ!!あの時はこの宮殿にあんまりビックリしてたから思わず約束しちゃったけど・・・。
だから!どうしても普通の物じゃだめなのよぉっっ!!!」



(・・・そ、・・・・それって・・・めちゃくちゃ答え簡単・・・・・)



同じ答えに行き着いたのか、互いに顔を赤くして視線がはち合った。

(・・・・かといって・・・ここで言うわけにもいかないしなぁ・・・・)

(やはり・・・、お一人、悩んでいただこう)



無言での会話をよそに、王妃キャロルは真剣にああでもないこうでもないと悩みぬいた。

結果、お風呂の大好きなメンフィスの為に、特製「バスクリン」なるものを各種開発してプレゼントしたらしい。




キャロルからすれば「激務でつかれたメンフィスの為に」『お疲れ様』的発想からだったようなのだが・・・・・

ファラオには別の意味で、この物品、いたくお気に召したということだ(?!謎爆)






-おしまい-